
こんにちは!「税理士補助スタッフのしごと帖」を運営しているゆずまるです。
税理士事務所に入ったばかりの頃、「月次、チェックしておいてね」と言われて、試算表を前に手が止まってしまうことはありませんか。
私は入社3年目で、法人・個人あわせて20件ほどの担当先を持っています。この記事では、月次チェックで私が最初に見る7項目を、見る順番どおりにまとめました。あわせて、AIやPythonを使って確認を楽にしている、私の工夫も紹介します。
この記事が向いている人
- 税理士事務所・会計事務所に入って1年目の方
- 経理で月次の確認を任された方
- 自分の見方に抜けがないか確かめたい方
もくじ
月次チェックは「合っているか」から「おかしくないか」の順に見る
月次チェックでやることは、大きく2つです。
- 帳簿の数字が、通帳などの事実と合っているか
- 合っている数字の中に、おかしな動きがないか
新人のうちは、いきなり「おかしな動き」を探そうとして迷いがちです。先に残高を合わせてしまえば、そのあとの確認がぐっと楽になります。これから紹介する7項目も、この順番で並べています。
1. 現金の残高がマイナスになっていないか
最初に見るのは現金です。帳簿の現金がマイナスになることは、現実にはありえません。お財布にないお金は払えないからです。
マイナスになっていたら、どこかに入力の漏れや間違いがあります。よくある原因は次のとおりです。
- 預金から引き出したお金の入力が漏れている
- 同じ領収書を2回入力している
- 日付を間違えて、入金より先に支払いが入っている
- 社長が個人のお金で立て替えた経費を、現金払いで入力している
ポイント
立て替え払いは、法人なら役員からの借入金、個人事業なら事業主借で処理するのが一般的です。事務所のルールを先に確認しておきましょう。
逆に、手元にあるはずのない大きな金額が現金に残っているときも、同じように原因を探します。
私のやり方
現金まわりは、次のように確認しています。
- 通帳の残高を日ごとに追い、帳簿と合っているか確認する
- 現金を引き出した日が、帳簿と合っているか確認する
- 仕訳一覧を印刷し、マーカーを引きながら領収書の金額に間違いがないか確認する
領収書からの仕訳づくりは、AI(Claude Code)を使って、会計ソフトに取り込めるデータを作れるようにして効率化しています。それでも、最終チェックは人の目で行います。
2. 預金の残高が通帳と合っているか
次に、帳簿の預金残高と、通帳(またはネットバンキング)の月末残高を見比べます。ここは1円単位で一致していないといけません。
合わないときは、差額の金額をヒントにします。
- 差額と同じ金額の取引が、漏れていたり二重になっていたりしないか
- 数字の入れ違いがないか(例:12,300円を13,200円と入力)
- 別の口座に入力していないか
- 振込手数料が差し引かれていないか
ポイント
差額が9で割り切れるときは、数字の入れ違いを疑います。12,300円と13,200円の差は900円で、9で割り切れます。
借入金がある顧問先は、返済予定表の残高とも合わせておきます。返済額を元金と利息に分けて入力していないと、ここでずれます。
3. 売掛金・買掛金に動かない残高がないか
売掛金と買掛金は、合計ではなく取引先ごとに見ます。
- 残高がマイナスになっている取引先はないか
- 何か月も同じ金額が残っている取引先はないか
- 数百円だけ残っている取引先はないか
マイナスは、入金を別の取引先で消してしまったときや、売上の計上が漏れているときに起こります。数百円の残りは、振込手数料を差し引いて入金された分であることが多いです。
長く残っている残高は、回収が遅れているのか、処理の間違いなのかで対応が変わります。自分だけで判断せず、先輩や顧問先に確認します。
4. 仮払金・仮受金が残ったままになっていないか
仮払金や仮受金は、内容がまだわからない取引を、いったん置いておくための科目です。便利ですが、放っておくと中身がわからないまま決算を迎えてしまいます。
月次のたびに中身を開いて、わかったものから本来の科目に振り替えます。わからないものは、顧問先への質問リストに書き出しておきます。
注意
「雑費」などの科目が増えているときも、同じ見方をします。とりあえず入れた取引がたまっていないか確認しましょう。
5. 毎月あるはずの取引が抜けていないか
ここからは「おかしな動き」を探します。まず、毎月かならず発生する取引が、今月も入っているかを見ます。
- 家賃・駐車場代
- リース料
- 給与・社会保険料
- 借入金の返済
- 水道光熱費・通信費
- 顧問料などの定額の支払い
会計ソフトの月次推移表を開くと、12か月が横に並びます。空白の月や、1か月だけ2倍になっている月を探すと、漏れや二重計上がすぐに見つかります。
私のやり方
仕訳が多い顧問先では、抜けている月に気づくのが大変です。そこで、会計データの摘要を取引先ごと・月ごとに並べ替えて、漏れや二重計上に気づけるCSVチェックの仕組みを作りました。
6. 前月・前年同月と比べて大きく動いた科目はないか
次に、前月や前年の同じ月と比べて、大きく増えたり減ったりしている科目を探します。見つけたら元帳を開いて、理由を確認します。
理由は、大きく2つに分かれます。
- 入力の間違い:科目の選び間違い、桁の打ち間違い、1年分の支払いを1か月に入れている など
- 実際の出来事:設備の購入、賞与の支給、新しい取引先との取引 など
私のやり方
私は、仕訳一覧から科目ごとの増減比較表を作るPythonのプログラムを用意しています。月次報告書をお渡しするときに、「なぜこの科目が増減しているのか」をまとめたダイジェストも一緒にお渡ししています。
顧問先からも「わかりやすい」と好評です。以前は元帳を1つずつ見比べていたので時間がかかっていましたが、今は数秒でできるようになりました。
7. 消費税の区分が合っているか
最後に消費税の区分です。会計ソフトは科目ごとに区分を自動で入れてくれますが、例外は人が直すしかありません。私は次のような取引を重点的に見ています。
- 飲食料品や新聞など、軽減税率の対象が標準税率になっていないか
- 給与、お祝い金や香典、寄附金など、消費税の対象にならない取引が課税になっていないか
- 住宅として借りている家賃、支払利息、保険料など、非課税の取引が課税になっていないか
- 請求書や領収書に、インボイスの登録番号があるか
給与は消費税の対象外ですが、通勤手当(通常必要な範囲)は課税の対象になります。こうした細かい例外が、新人のうちは落とし穴になりやすいです。
区分の考え方は、国税庁のタックスアンサーで確認できます。迷ったら、まずここを見ています。
注意
税率や、登録番号のない相手からの仕入れの扱いは、時期によって変わります。令和9年4月からは飲食料品の税率が引き下げられる予定です。必ず最新の情報と、事務所の処理ルールを確認してください。
顧問先が簡易課税や免税事業者の場合は、見るポイントが変わります。最初に課税方式を確認しておくと安心です。
まとめ:月次チェックの7項目
月次チェックの7項目
- 現金の残高がマイナスになっていないか
- 預金の残高が通帳と合っているか
- 売掛金・買掛金に動かない残高がないか
- 仮払金・仮受金が残ったままになっていないか
- 毎月あるはずの取引が抜けていないか
- 前月・前年同月と比べて大きく動いた科目はないか
- 消費税の区分が合っているか
最初の4つで「合っているか」を、あとの3つで「おかしくないか」を確認する流れです。慣れてくると、試算表を見ただけで気になる科目が目に入るようになります。
なお、手順や判断の基準は、事務所や会計ソフトによって違います。この記事は私の見方をまとめたものなので、最終的な判断は担当の税理士や先輩に確認してください。
税理士補助スタッフの仕事全体については、こちらの記事にまとめています。
入力やチェックを楽にする工夫は、こちらもどうぞ。
仕訳のおさらいには、経理部の新入社員研修という設定のクイズゲーム「研修ナビ」も作りました。簿記3級くらいの仕訳を、〇×と4択で解けます(少しだけ不穏です)。



